更新日:2022/01/25
市場調査って何?代表的な調査方法と活用事例
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
マーケティングを行う上で、「市場調査」はとても重要です。
ユーザーの置かれている環境や価値観を把握することが可能で、マーケティング施策を行う一つの指標となります。
今回は市場調査を実施し、マーケティング戦略を考えるコツを紹介します。
この記事の目次はこちら
市場調査とは?
マーケティングにおける「市場調査」とは、「市場の現状を調査によって明らかにすること」です。
例えば、「○○という商品を知っていますか?」というアンケート調査を行うことで、その商品の「認知度」を観測することができます。
これは「認知度調査」と呼ばれる市場調査の一つです。
これにより、現在の市場で「○○という商品がどのくらい認知されているのか」を明らかにすることができます。
同じ調査でも調査対象を絞れば、よりピンポインな調査結果を得られます。
例えばメインターゲットに絞れば、「メインターゲット層にどの程度認知されているか」を明らかにできます。
上記はあくまで一例にすぎませんが、このように市場の状況を把握するために行われます。
市場調査のメリット
市場調査のメリットは、「調査結果のデータに基づく予測をたてられる」ことです。
ターゲットのニーズや属性はもちろん、競合他社の状況やトレンドなど、マーケティングを行うにあたり役に立つデータを入手できます。
そのデータを検証した結果、
- 対象商品・サービスの市場における立ち位置の把握
- 幅広い顧客のニーズを満たす商品・サービスの提供
- リスクの少ない(今後も人気が続くであろう)商品・サービスの提供
といったことが可能になります。
こちらも一例を見てみましょう。
「20代をターゲットとした商品A」の認知度調査を行ったとします。
調査の結果想定とは異なり、30台の認知度が最も高い結果が得られました。
この結果があれば、ターゲットを「20代向け」から「30代向け」に変更することが可能で、効果的なマーケティング施策を打つことが可能です。
逆に調査を行っていなかったら、認知度が低い20代に向けたCMや広告を打っていたかもしれません…
データから予測がたてられるのはとても嬉しいですね。
※施策の許可を得る時に上司を説得するのも楽になりそうです。
マーケティングリサーチとの違い
市場調査と似たような言葉で「マーケティングリサーチ」という言葉があります。
非常に近い言葉なのですが、「マーケティングリサーチ」には、「現在の状況に限らず、未来の市場動向に対しても予測や分析を行う」という意味合いがあります。
- 市場調査・・・市場の現状を調査する
- マーケティングリサーチ・・・市場の過去、現在、未来を分析、予測する。
その意味では、市場調査はマーケティングリサーチの一部分とも言えます。
代表的な市場調査の種類
市場調査の種類は、大きく分けると定量調査と定性調査に分かれます。
【定量調査】
定量調査は、「数字で表すことができるデータを調査する事」です。
満足度が○○%や、「はい」と回答した人が○○%というように、調査をした結果が数字で表せるものですね。
定量調査で分かるのは、下記のような項目です。
認知度
「○○についてどういうイメージをお持ちですか?」って聞いたことありますよね。
これは「ブランディングの確認」のために行われています。
商品を選ぶときに「知っている」ことは大きなアドバンテージになります。
なので、こういった質問をよく目にするわけですね。
イメージが全くないと店頭で手に取ってもらうことは難しくなり、認知を広めていく戦略が必要になります。
例えば、携帯電話のテレビCMって個性的なものが多いですよね(笑)
皆さんも白い犬や桃太郎は覚えてても、肝心のプラン内容はさっぱり、なんてことはないですか?
あれは、プラン内容や機種での差別化が難しく、とにかく認知してもらうことが売り上げにつながる、ということを理解した上での戦略なわけですね。
プロモーション方法
プロモーション方法には、テレビCMや動画広告、Webバナー広告など、様々な物があります。
その中で、ターゲットがよく目にしている方法や効果が分かれば、プロモーションを効率よく行えますよね?
例えば、動画広告は、10代20代にアプローチするのに適した広告です。
しかし、広告の内容によっては、「広告ウザイ。この商品だけは絶対に買わない」と思われてしまう可能性もあります。
調査によって、「そのプロモーション方法が本当に効率良くアプローチできるものなのか」が分かります。
値段
聞き方によっては定性にも定量にもなります。
消費者が「平均いくら使っている」や「いくらまでなら払ってもいい」ということを調査します。
ストレートに「○○にいくらまでなら払えますか?」という考えの調査や「普段○○にどれくらいお金をかけていますか?」といった実態の調査、両方可能です。
データの取得が可能な質問であれば後者が良さそうですね。
新商品などの場合はデータがありませんので、感覚を調査することになります。
【定性調査】
定性調査は数字では明らかにならないような定性的なデータを調査します。
インタビューや自由回答のアンケート調査に代表されるような、「なんでそう思うのか」といった意味を解釈します。
定性調査では、下記のようなことが分かります。
不満
「自動で掃除してくれるロボット」を売ってきてください。
突然こんな指示を出されたらどうすれば売れるでしょうか?
恐らく今使っている掃除機に「重い」や「かさばる」「面倒」といった不満がなければ売れませんよね?
「不満」は解釈次第ではニーズに直結します。
例えば「面倒」なら自動化を、「重い」なら「軽量化」を「かさばる」なら小型化をする必要があります。
これら全てを満たしたら、もしかしたら売れるかも…
という気がしてきませんか?
購入理由
直球ですが、「何で弊社の商品を選びましたか?」の回答は、マーケティングの戦略立案に役立ちます。
選択肢を用意すれば数値化することもできますが、それだと想定外の理由は調査できませんね。
このような「考えやイメージ」を調査することもマーケティングには重要です。
代表的な市場調査のよくある方法一覧
これまで、「○○を調べる」という「対象」を説明して来ました。
次は「どうやって」調べるか、調査方法の紹介をしたいと思います。
アンケート
紙やインターネットを使ってアンケートをとって集計します。
恐らくこれが、最もポピュラーな方法だと思います。
ただし、アンケートは聞き方によって、回答を操作できてしまうため、注意が必要です。
例:Webマーケティングの重要性は年々高まっていますが、あなたはWebマーケティングを勉強したいと思いますか?
「そう思う」~「そう思わない」
このように、設問文でバイアスがかかってしまうと、正確な調査結果を得られません。
設問を作る際には、注意してください。
現地調査
実際に現場に行くことで、状況を明らかにします。
代表的な例に、交通量調査や覆面調査があります。
交通量や、店員の対応の良さなどは、現地に行くことで正確なデータを得られます。
なので、覆面で調査員を雇って店舗に言ってもらったり、現地で実際の交通量を調査してもらったりするわけです。
テストマーケティング
テストマーケティングは、「実際に商品を世に出して、市場の反応を見る事」です。
試験的に商品を販売して、本当に商品が売れるかを確認するために使われます。
地域を限定するなどして、小規模で実験するケースが多く、限定的なためコストを抑える事が可能です。
最後に、全体を通して気を付けて欲しい点は、「調査方法によっては集計に偏りが出る」点です。
例えば、動画サイトでアンケートをとった場合、動画を見ている割合が高い若年層の回答がたくさん集まります。
一方で、固定電話での聞き取りをした場合、固定電話を持っている割合が高い高齢層の回答がたくさん集まります。
このように、調査方法によって偏りがでるため、注意が必要です。
市場調査の例
ここまで色々と説明して来ましたので、実際に調査を企画してみましょう。
今回は、弊社の「ネクストSFA」を例に市場調査をしてみます。
【ネクストSFA、テレビCM計画】
- 背景(目的)
ネクストSFA無料体験への申込みが少ないため改善したい。(あくまで例です) - 課題
知名度が低い - 改善策
知名度をあげるため、「ネクストSFAテレビCM計画」を実行する
テレビCMは非常にコストがかかります。
そのため、これが正しい解決策なのか、調査しないといけません。
①調査課題の設定
「何を知りたいか」を決めます。
今回は「知名度」を知りたいですね。
②仮説の構築
関東圏の営業担当者の20%程度が「名前くらいは聞いたことがあるレベル」という仮説を立てます。
③調査の設計と実施
調査の準備をしましょう。
対象・手法・媒体・内容の4つを決めれば、実行できますね。
- 対象:関東に本社がある全ての会社
- 手法:アンケート調査
- 媒体:紙媒体(他の候補はWeb媒体)
- 内容:あなたはネクストSFAを知っていますか?
調査結果は母数が多いほど信頼性が高まります。
答えてくれるか微妙な時は、「回答してくれたら、1,000円のクオカードをプレゼント!」
といったようなキャンペーンもありですね。
ちなみに、現金をそのまま渡すのはNGなケースもありますので、気を付けましょう。
④データ分析と仮説検証
調査結果:80%の営業担当者がネクストSFAを知っていた!
上記の結果でしたら、仮説は外れです。
ネクストSFAは、意外と知名度があるという結果になりました。
社内で検討されていた、知名度を上げるための「テレビCM」の計画は没になるでしょう。
このように、調査は目的をもって行われ、マーケティングに活用されます。
有名な市場調査の事例
「ネクストSFA」の調査はどうでもいい!もっと有名な事例が知りたい!
という方も多いと思うので、有名な事例を紹介します。
アサヒ缶チューハイ
アサヒの缶チューハイはご存知でしょうか?
「もぎたて、生絞り」的なイメージのやつです。 アサヒはそれまで、缶チューハイなどの「缶で飲むアルコール商品」があまり売れず困っていたようです。 そこで、顧客のニーズはどうなっているのかを把握するために、約4,000人への定量調査と、約300人への1対1のインタビュー調査という大規模な市場調査を行いました。 その結果、消費者がもとめているのは「新鮮な果汁の味」で、「人工的な味」に嫌気が指していることが明らかになりました。 結果を基に、できるだけ「新鮮な果汁の味」になるように、新たな製法を開発、新商品を販売しました。 ※参考:グロービス「MBAマーケティング」p170,171 このように、市場調査をすることで、消費者の求めているものが鮮明に見えてきます。
結果によっては、社内の意思決定が覆ることもあります。
調査結果はあくまでデータであって、どう活用するかが重要です。
分析は慎重に行い、誤った方向にマーケティングが進まないように注意してください。
まとめ
市場調査は「市場の現状を知るために、調査を行うこと」です。
代表的な調査の方法には、下記のような例があります。
- アンケート
- 現地調査
- テストマーケティング
調査で明らかになる市場の現状には、下記の様な例があります。
- イメージ
- 不満
- 値段
- プロモーション方法
市場調査は、下記の手順で行いましょう。
- 調査課題の設定
- 仮説の構築
- 調査の設計と実施
- データ分析と仮説検証
このように市場調査を行えば完璧です!参考にしてみてください!