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SFA JOURNAL by ネクストSFA

セキュリティ診断の適切な頻度とは?サイバー攻撃に備える最適なタイミングと決め方

株式会社ジオコード クラウド事業 責任者 庭田 友裕

【監修】株式会社ジオコード クラウド事業 責任者
庭田 友裕

今日のデジタルビジネス環境において、企業はかつてないほど多様化・高度化するサイバー攻撃の脅威に晒されています。情報漏洩やシステム停止といったインシデントが発生すれば、事業継続が危ぶまれ、企業ブランドに深刻な損害を与えかねません。こうしたリスクに効果的に対抗するためには、自社のシステムやネットワークに潜む脆弱性を継続的に「見える化」するセキュリティ診断が不可欠です。一度きりの診断では、日々生まれる新たな脆弱性やシステムの変化に対応できません。セキュリティ対策は、一時的な点検ではなく、常に変化に対応し続ける「線」の取り組みであるべきです。本記事では、企業の管理部門や経営層の皆様が、変化する脅威環境において自社を守るために、セキュリティ診断をなぜ継続的に行う必要があるのか、その最適な頻度を決定する要因、具体的な目安となるタイミング、そして頻度を検討・管理する方法について、A案・B案の内容を統合し、経営判断に必要な視点から解説します。適切な頻度での診断は、サイバー攻撃に備え、ビジネスの安全を確保するための重要な経営戦略です。

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Broadcom Inc. Symantec Endpoint Security
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要お問い合わせ 脆弱性の修復
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分析・調査 など
エクスジェン・ネットワークス株式会社 L2Blocker
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オンプレミス版:25,000円~
クラウド版:月額3,000円~
社内端末の管理機能
利用状況の可視化
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未登録機器の利用申請
レポート分析 など
株式会社セキュアソフト SecureSoft Sniper IPS
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要お問い合わせ リアルタイムモニター
統合報告書
システム監査
環境設定
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ソフォス株式会社 Sophos Firewall
  • 高度な脅威を分かりやすく表示し、ネットワークを適切に制御
  • 次世代型の強力な保護テクノロジーにより未知の脅威を阻止
  • 脅威の拡散を防ぐため感染したシステムを即座に隔離可能
要お問い合わせ ディープパケットインスペクション
ゼロデイ対策
SD-WAN接続
セグメンテーション機能
レポート機能 など
株式会社IDCフロンティア 不正侵入検知/防御サービス
  • 導入時間の短縮と社内で必要なセキュリティ要員の縮小が可能
  • 増え続けるインターネット上の脅威を迅速に遮断し、不要なダウンタイムを回避
  • セキュリティ専門家による24時間体制でのセキュリティ運用最適化を実現
要お問い合わせ 検知レポート
機器監視
設定管理
故障時機器交換
変更監視 など
ソースネクスト株式会社 ZERO スーパーセキュリティ
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フォーティネットジャパン合同会社 FortiGuard IPS
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要お問い合わせ ネットワーク保護
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NTTスマートコネクト株式会社 クラウド型UTM
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月額38,500円~(税込)
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サクサ株式会社 サクサのUTM
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要お問い合わせ Webフィルタリング機能
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侵入検知・防止機能
パロアルトネットワークス株式会社 PA-SERIES
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  • 顧客からのフィードバックのみに基づいて決定されるカスタマーズチョイス賞を受賞
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Google LLC Google Cloud IDS
  • 組織のニーズに基づいたトラフィックの検査が可能
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要お問い合わせ ネットワークベースの脅威検出
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コンプライアンス目標の支援
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1. なぜ継続的なセキュリティ診断が必要なのか?変化するリスク環境

一度セキュリティ診断を実施したとしても、その診断結果はあくまで「その時点」におけるシステムのスナップショットに過ぎません。診断後もシステムの安全性は絶えず変化するため、継続的な診断が不可欠となります。その主な理由は、セキュリティを取り巻く環境が常に動的であるからです。

まず、サイバー攻撃の手法は常に進化しています。攻撃者は日々新たな攻撃ツールや技術を開発し、従来の防御策を迂回する方法を模索しています。過去の診断で検出されなかったタイプの攻撃が、将来的にシステムを侵害する可能性は十分にあります。次に、新たな脆弱性が日々発見され、公開されています。ソフトウェアやハードウェアには未知の弱点が存在し、研究者や攻撃者によって継続的に発見されています(例:CVE情報)。これらの新たな脆弱性が、自社が使用しているシステムに影響を与える可能性もゼロではありません。

さらに、企業のシステムやアプリケーションは固定されているわけではなく、機能の追加、設定変更、バージョンアップといった変更が頻繁に行われます。これらのシステム変更は、時に予期しない形で新たなセキュリティホールを作り出してしまう可能性があります。開発者や運用担当者が注意を払っていても、複雑なシステム連携の中で脆弱性が発生するリスクは避けられません。システムが変更される度に、診断時点のセキュリティ状態は無効になると考えた方が賢明です。

また、法規制や業界標準の要求も変化することがあります。情報セキュリティに関する規制やガイドラインが改訂され、以前は求められていなかったセキュリティ対策や診断頻度が新たに義務付けられる場合があります(例:PCI DSS、NIS2指令)。こうした外部環境の変化に対応するためにも、定期的な診断による現状把握と対策の見直しが必要です。セキュリティ診断を受けていない期間は、こうした変化によって発生した新たなリスクに対して無防備な状態になることを意味します。継続的な診断は、常に変化する脅威とシステムの状態を把握し、リスクをタイムリーに評価・対策するために不可欠であり、企業のレジリエンス(回復力)を高める基盤となります。

継続的な診断が必要な理由(変化のドライバー)

  • サイバー攻撃手法の進化
  • 新たな脆弱性の発見と公開
  • システム・アプリケーションの変更/更新
  • 法規制・業界標準の要求変化

2. セキュリティ診断の最適な頻度を決定する主な要因

セキュリティ診断の最適な頻度は、企業のビジネスモデル、システム構成、直面しているリスク、そして利用可能なリソースによって大きく異なります。一律の正解は存在しないため、自社にとって最も効果的かつ現実的な頻度を決定するためには、いくつかの重要な要因を総合的に考慮する必要があります。経営層や管理部門は、これらの要因を踏まえて判断を下すことになります。

まず、最も重要な要因は診断対象の重要度とそれに伴うリスクレベルです。企業にとってビジネスクリティカル度が高いシステム、例えば、顧客の機密情報を取り扱うデータベース、オンライン決済システム、事業継続に不可欠な基幹システムなどは、セキュリティインシデントが発生した場合のビジネスへの影響が計り知れません。これらのリスクが高いシステムほど、より高い頻度での診断を実施し、常に最新のセキュリティ状態を把握しておく必要があります。一方、機密性の低い情報を扱い、事業継続への影響が少ないシステムであれば、比較的低い頻度でも許容される場合があります。

次に、システムやサービスの変更頻度も診断頻度を決定する上で重要な指標です。Webサイトやアプリケーションが頻繁にアップデートされたり、大規模な機能追加や設定変更が多く行われるシステムは、その変更に伴って新たな脆弱性が作り込まれるリスクが高くなります。変更が多いシステムほど、変更後のセキュリティ状態を確認するために高い頻度での診断が推奨されます。開発手法がアジャイルでリリースサイクルが短い場合なども、診断を開発プロセスに組み込む必要があります。

関連する法規制や業界標準で定められた要求も、診断頻度を決定する上で無視できません。特定の業界や情報を取り扱う事業者は、コンプライアンス要件として、特定の種類のセキュリティ診断を特定の頻度(例:四半期ごと、年1回など)で実施することが義務付けられている場合があります(例:PCI DSSの四半期ごとスキャン、特定の重要インフラにおける年1回以上の診断報告義務化など)。自社が遵守すべき規範を確認し、そこで定められた最低限の頻度を満たすことが必須です。

過去に実施した診断の結果や発見された脆弱性の傾向も参考にすべきです。過去の診断で継続的に多くの脆弱性が見つかる、特にリスクレベルの高い脆弱性が繰り返し検出されるといった場合は、システムの構造的な問題や運用プロセスに課題がある可能性が考えられます。このような場合は、通常よりも高い頻度で診断を実施し、根本的な改善が進んでいるかを確認する必要があります。また、組織全体のリスク受容度も考慮に入れるべきです。リスク回避を重視する企業であれば、より高い頻度で診断を実施し、潜在的なリスクを積極的に排除しようとします。

最後に、診断にかけられる利用可能な予算とリソースという現実的な制約も存在します。理想的な頻度であっても、コストや社内リソースが不足していれば実現できません。全てのシステムを最高頻度で診断することが難しい場合は、リスク評価に基づいて診断対象や診断手法の優先順位をつけ、予算内で最大の効果が得られる計画を策定することが求められます。これらの要因を総合的にバランス良く評価し、自社にとって最適な診断頻度を決定することが重要です。

最適な診断頻度を決定する主な要因

  • 診断対象の重要度/リスク: ビジネスへの影響度が高いシステムほど高頻度。
  • システム変更頻度: 変更が多いシステムほど高頻度。
  • 法規制・業界標準の要求: 遵守義務のある最低頻度を確保。
  • 過去の診断結果の傾向: 脆弱性が多発している場合は警戒。
  • 利用可能な予算とリソース: 現実的な制約の中で優先順位付け。
  • 組織のリスク受容度: どこまでリスクを許容できるか。

3. セキュリティ診断頻度の一般的な目安と推奨タイミング

セキュリティ診断の最適な頻度は個々の状況によって異なりますが、多くの企業にとっての一般的な目安や、診断を実施すべき重要なタイミングが存在します。これらの目安や推奨タイミングを参考に、自社の診断計画を具体的に検討することができます。

定期的なセキュリティ診断の一般的な目安としては、システムの特性や重要度に応じていくつかの頻度が考えられます。最低限のセキュリティチェックとして多くの企業で実施されているのは年1回の診断です。これは、システムの変更が比較的少ない場合や、セキュリティ診断の導入をこれから始める企業にとって現実的な出発点となります。Webサービスなど外部に公開されており、ある程度の頻度で更新が行われるシステムの場合は、四半期ごと(年4回)の診断がより一般的な目安です。これにより、年間のシステム変更や新たな脅威に対して、よりタイムリーにリスクを評価し、対応できます。金融機関のシステムや、常に機密性の高い情報を扱うシステム、あるいは頻繁に機能追加やアップデートが行われる重要なサービスの場合は、毎月、あるいはシステムの変更と並行して常時脆弱性をチェックする継続的な診断(Continuous Assessment)の導入が推奨されます。

定期診断のスケジュールに加え、特定のイベント発生時にこそ、必ずセキュリティ診断を実施すべき推奨されるタイミングが存在します。これらのタイミングでの診断は、新たなリスクが発生する可能性が極めて高いため、定期診断のサイクルとは別に実施を検討すべきです。最も重要なタイミングの一つは、新しいWebサイトやサービスを一般公開する直前です。公開前に脆弱性を解消しておくことで、安全な状態で運用を開始できます。また、既存のシステムに対して大規模な機能追加や改修、メジャーバージョンアップを行った直後も、診断は必須です。改修によって新たな脆弱性が混入している可能性が高いため、変更後のセキュリティ状態を必ず確認する必要があります。同様に、重要なネットワーク設定の変更や、サーバー、ファイアウォールといったインフラ機器の構成変更を行った後も、セキュリティホールが発生していないかを確認するための診断が必要です。

さらに、セキュリティに関する法規制や業界標準に重要な改訂があった際も、自社の対応状況を確認するために診断を実施することを検討すべきです。また、世界的に広範囲に影響を及ぼす重大な脆弱性に関するニュースが発表された際には、自社システムへの影響がないか、または適切な対策が講じられているかを確認するために、緊急で診断を検討する必要があります。万が一、セキュリティインシデントが発生してしまった後も、その原因となった脆弱性が解消されたか、そして再発防止策が適切に機能するかを確認するために、必ず再診断を実施することが重要です。これらの推奨タイミングでの診断を計画に組み込むことが、変化するリスクへの対応力を高めます。

セキュリティ診断頻度の目安と推奨タイミング

  • 定期診断の目安:
    • 年1回: 最低限、システム変更が少ない場合
    • 四半期ごと: 一般的、ある程度の変更があるシステム
    • 毎月/継続的: 重要システム、頻繁な更新
  • 特に推奨されるタイミング:
    • 新規公開/メジャーアップデート前
    • 重要な設定/インフラ変更後
    • 法規制改訂時
    • 重大脆弱性ニュース発表後
    • インシデント発生後(再発防止確認)

4. 企業規模・システム特性・開発サイクル別の診断頻度

セキュリティ診断の最適な頻度を考える際には、企業の規模だけでなく、診断対象となるシステムの具体的な特性や、そのシステムの開発・運用サイクルも考慮に入れることで、より実効性の高い計画を策定できます。画一的な頻度ではなく、実態に合わせた柔軟なアプローチが必要です。

中小企業の場合、セキュリティにかけられる予算や専門人材が限られていることが多いため、大企業と同じレベルで網羅的・高頻度な診断を実施するのは現実的ではありません。まずは、自社にとって最も重要なシステム(例:外部公開している主要Webサイト、顧客情報を取り扱うシステム)に焦点を絞り、年に1回の診断から始めることを検討します。さらに、システムの大きな変更やアップデートを行った際など、リスクが高まるイベント発生時には、定期診断の時期に関わらず臨機応変に診断を実施する体制を構築することが重要です。コストを抑えつつ頻度を確保するためには、診断範囲を限定したり、費用対効果の高いツール診断と手動による要点チェックを組み合わせたサービスを選択することも有効です。

大企業は、システムの種類が多岐にわたり、複雑な連携を持つことが一般的です。この場合、全てのシステムに同じ頻度を適用するのではなく、システムごとの重要度やリスクレベルに応じて異なる頻度を設定する多段階のアプローチが効果的です。例えば、インターネットバンキングのような極めてクリティカルなシステムは毎月、社内ポータルは年1回、といったように優先度をつけます。また、大企業ではシステムの開発や改修が継続的に行われるため、開発プロセス(例:アジャイル、CI/CD)にセキュリティ診断を組み込むDevSecOpsの考え方が重要になります。コードのコミットやリリースのタイミングで自動診断ツールを実行したり、大きな節目で手動診断を実施するなど、開発サイクルと連携した継続的な診断体制を構築することが推奨されます。

システム特性や開発サイクルによる具体的な頻度設定の考え方としては、例えば、アジャイル開発やCI/CD環境のように頻繁にリリースが行われる場合は、リリースごと、あるいは夜間バッチでの自動脆弱性スキャンを組み込み、月次やスプリント終了時に手動での詳細レビューを行うといったアプローチが考えられます。ウォーターフォール型で大型リリースを行う場合は、リリース直前の最終チェックとして手動ペネトレーションテストを実施し、その後はシステムの安定運用期間に合わせて定期診断(例:年1回)を行うのが一般的です。レガシーシステムのように変更頻度が低い場合は、年1回の診断をベースとしつつ、OSやミドルウェアのアップデート時には必ず診断を実施するなど、変更時をトリガーとした診断が有効です。クラウドネイティブ環境では、インフラの変更が頻繁なため、継続的な監視と連携した診断や、 Infrastructure as Code (IaC) のセキュリティチェックなども組み合わせる必要があります。自社のシステムの実態に合わせて、最もリスクを効率的に低減できる頻度と手法を見極めることが重要です。

企業規模/システム特性/開発サイクル別の頻度検討

  • 中小企業: 資源考慮、重要システム優先、年1回目安+変更時。
  • 大企業: 重要度別多段階頻度、開発サイクル連携(DevSecOps)。
  • システム特性: アジャイル/CI/CD=高頻度自動+月次手動、ウォーターフォール=リリース前PT+年次、レガシー=年次+変更時。

5. 診断頻度とコスト:費用対効果と効率的な管理

セキュリティ診断の頻度を高めるほど、潜在的な脆弱性を発見し、リスクを低減できる可能性は高まりますが、同時に診断にかかるコストも増加します。経営層や管理部門としては、診断頻度とコストのバランスを適切に取り、セキュリティ投資の費用対効果を最大化することが重要な役割となります。

診断頻度を高めることで発生するコストは、主に外部ベンダーへの診断費用ですが、それに加えて、検出された脆弱性を修正するためのシステム改修や設定変更にかかる内部コスト(人件費、工数)、そして診断結果の確認やベンダーとの連携、対策の進捗管理といった運用管理にかかる負担も考慮に入れる必要があります。これらのコストは、診断対象の範囲、診断手法(手動診断の割合)、そして頻度によって大きく変動します。

セキュリティ診断への投資を検討する際は、単に支出としてのコストを見るのではなく、費用対効果(ROI)という視点を持つことが不可欠です。診断費用はリスクを低減するための先行投資であり、これを怠った場合に発生しうるサイバー攻撃による潜在的な損害コストと比較衡量すべきです。情報漏洩やシステム停止といったインシデントが発生した場合、その復旧費用、損害賠償、ビジネス機会の損失、そしてブランドイメージの失墜といった損害は、定期的なセキュリティ診断にかかる費用をはるかに上回ることがほとんどです。適切な頻度での診断は、これらの甚大なリスクを回避するための有効な手段であり、そのリスク低減効果を金銭的な価値として捉えるべきです。

限られた予算の中で必要な診断頻度を確保するためには、コストを抑えつつ効率的に運用管理を行うための工夫が求められます。例えば、全てのシステムを最高頻度で詳細診断するのではなく、リスク評価に基づいて診断範囲を限定したり、重要度の低いシステムには自動診断ツールを活用し、重要度の高いシステムには専門家による手動診断やペネトレーションテストを組み合わせるなど、診断手法を使い分けることでコストを最適化できます。複数のシステムやサービスをまとめて診断を依頼したり、複数年契約を結んだりすることで、ベンダーから割引を受けられる場合もあります。

また、診断頻度を組織内で効率的に管理するためには、診断ポリシーを明確に文書化し、年間スケジュールとして策定することが推奨されます。診断対象、頻度、手法、担当部門などを明確に定めたポリシーは、関係者間の共通認識を醸成し、運用をスムーズにします。診断スケジュールは、システムのリリース計画やメンテナンススケジュールと連携させて策定することが望ましいです。これらの計画に基づき、自動通知機能を活用したり、診断の実施状況や結果をダッシュボード等で可視化したりすることで、管理部門や経営層が全体の進捗状況を把握しやすくなります。診断費用だけでなく、運用管理の工数も含めた総所有コスト(TCO)を考慮し、コスト効率の高い運用体制を構築することが、継続的なセキュリティ対策を実現する上で重要です。

診断頻度と費用対効果、効率管理のポイント

  • 費用対効果: 診断コスト vs 潜在損害コスト、リスク低減価値。
  • コスト抑制策: 範囲限定、ツール活用、複数年契約等。
  • 効率管理: ポリシー策定、スケジュール化、通知・可視化、TCO考慮。

6. まとめ:経営戦略としての継続的セキュリティ診断

サイバー脅威は絶えず変化し、企業のシステムも更新されるため、セキュリティ診断は一度受ければ十分ではありません。継続的な診断を適切な頻度とタイミングで実施することが、変化する脅威に備え、ビジネスの安全を維持するために不可欠です。

最適な診断頻度は、診断対象のリスクレベル、システム変更頻度、法規制や業界標準の要求、そして予算やリソースなど、様々な要因を総合的に考慮して決定すべきです。一般的な目安としては年1回や四半期ごとが考えられますが、Webサイトの新規公開、システムの大規模改修、あるいは重大な脆弱性の発表といった特定のタイミングでは、優先的に診断を実施することが強く推奨されます。企業規模やシステム特性によっても最適なアプローチは異なり、リスクの高い部分への集中、重要度に応じた頻度の設定、開発サイクルへの組み込みといった柔軟な計画が求められます。

診断頻度を高めることはコスト増に繋がりますが、これはサイバー攻撃による潜在的な損害リスクと比較衡量されるべき、費用対効果の高い先行投資です。リスク低減による事業継続性確保や企業信頼性向上といった価値を重視し、予算内で最大の効果が得られるよう診断範囲や手法を使い分けることが重要です。診断頻度を組織内で効率的に管理するためには、明確なポリシー策定、スケジュールの可視化、運用管理体制の整備も不可欠となります。

セキュリティ診断への適切な投資と、その結果を活かした継続的な対策は、単なるIT部門のタスクではなく、企業のデジタル資産と事業そのものを守るための、経営層が主導すべき戦略的な取り組みです。管理部門や経営層の皆様には、本記事で解説した診断頻度を決定する要因や目安を参考に、自社の状況に合わせた最適な計画を策定し、変化するサイバー脅威への最良の備えとして、継続的なセキュリティ診断を推進していただくことを強く推奨いたします。

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