SFAのダッシュボードで何を見る?数字を営業改善につなげる使い方
【監修】株式会社ジオコード クラウド事業 責任者
庭田 友裕
SFAのダッシュボードは、営業の状況をまとめて確認し、次の行動を決めるための画面です。受注額だけでなく、案件の進み方や対応の遅れまで見ると、支援が必要な場所を探せます。グラフを増やす前に、誰が何を判断する画面かを決めましょう。
この記事では、見るべき数字、役割別の構成、営業会議での使い方を解説します。集計条件や更新時刻が違うことで生じる、数字の読み違いにも注意してください。
SFAのダッシュボードは営業の判断を助ける画面
ダッシュボードでは、複数の指標やグラフをまとめて表示できます。担当者や期間を絞り、問題のある案件を探す入口として使いましょう。
ダッシュボードとレポート・BIの役割を分ける
レポートは、特定の条件でデータを集計した明細や結果です。ダッシュボードは、それらを組み合わせて状況を見渡すために使います。
売上や案件数の変化に気づいたら、元のレポートや案件明細へ進みます。合計値だけを見て原因を決めつけず、対象案件を確認する流れが基本です。実際の画面名や使える集計方法は製品によって異なります。
BIは、SFA以外のデータも合わせた分析に使う選択肢です。ただし、会計や広告のデータをつなげれば、数字の定義まで自動で揃うわけではありません。まずはSFAの標準機能で必要な判断ができるかを確かめましょう。
見える化の目的を確認・発見・行動に分ける
数字を見せるだけでは、営業のやり方は変わりません。状況の確認、問題の発見、次の行動までを設計することが大切です。
例えば、今月の受注見込みが足りないと分かった場合を考えます。案件そのものが少ないのか、提案後に停滞しているのかで、必要な行動は異なります。経営者向けの合計値だけでは、担当者が動けない場合もあるでしょう。
各指標に、悪化したとき確認する一覧と担当者を対応させてください。見る目的を説明できないグラフは、一度外しても構いません。
最初に見る数字は成果・案件・活動のつながりで選ぶ
営業の結果は、受注額だけでは説明しきれません。案件の量と進捗、日々の活動をつなげて見ると、改善の候補が見えてきます。
受注額・達成率・粗利で事業成果を確かめる
最初に確認したいのは、目標に対してどこまで進んだかです。受注額、受注件数、目標達成率を、自社の管理基準に合わせて表示します。
受注額と売上計上額、入金額は分けてください。契約が決まっていても、納品や会計上の計上が先になる場合があるためです。複数年契約では、契約総額と月額を混ぜないことも重要になります。
粗利を追う場合は、原価の取得元と更新時期を揃えましょう。金額が増えていても、値引きや提供コストで利益が減る可能性があります。目標の変更があったときは、変更日と理由も残してください。
案件数・案件金額・段階別の滞留を見る
受注前の案件を、進捗段階ごとに確認しましょう。件数と金額を両方見ると、大型案件への依存にも気づきやすくなります。
案件が多くても、同じ段階に留まったままでは受注の準備が進んでいません。段階に入った日、直近の顧客接点、次の行動の期限を合わせて確認してください。単に更新日が新しいだけでは、商談が進んだ根拠にはなりません。
担当者、商品、流入経路で分けると、停滞の傾向を探せます。ただし、商談期間が違う商品を同じ基準で比べると、評価を誤ることがあります。
受注率・平均単価・商談期間の定義を揃える
受注率を見るときは、分子と分母を明確にします。同じ名称でも、集計方法が違えば数値を比較できません。
例えば、期間内に結論が出た案件を見る方法があります。この場合は、受注件数を受注と失注の合計件数で割ります。まだ進行中の案件を含む受注率とは意味が違うため、画面に定義を表示しましょう。
平均単価は大型案件に、平均商談期間は極端に長い案件に引っ張られます。中央値や金額帯別の内訳も確認すると、通常の案件の姿を捉えやすくなるでしょう。期間は案件作成からか、初回接点からかを固定してください。
活動数は次の段階へ進んだ割合と一緒に見る
電話やメール、訪問の件数は、行動量を把握する指標です。件数だけで評価すると、成果につながらない記録が増えるおそれがあります。
電話を増やしたときは、接続、課題確認、商談設定まで進んだかを見ましょう。提案の件数が増えた場合も、次回打ち合わせや条件合意につながったかが重要です。営業段階ごとに、期待する次の変化を定めてください。
自動記録と手動記録を併用するなら、同じ活動の重複計上に注意が必要です。複数の担当者が参加した商談を、会社として何件と数えるかも揃えましょう。
獲得単価や顧客価値は連携データが揃ってから使う
顧客獲得費用や継続的な顧客価値を見るには、SFA以外の情報が必要になる場合があります。広告費、営業人件費、原価、解約などの範囲を定めましょう。
費用を広告費だけに絞った数字と、営業費も含む数字は同じ名称で比較できません。受注した顧客が、どの期間の活動から生まれたかも考慮が必要です。データが揃わない段階では、無理に全社共通の指標へまとめないでください。
営業速度のように複数指標を掛け合わせる数値も、元の条件が揃って初めて役立ちます。合成した数字が改善していても、構成する件数や単価に戻って確かめましょう。
役割ごとに判断しやすいダッシュボードを用意する
担当者と経営者では、見たい期間も判断する内容も異なります。共通の定義を使いながら、役割に合わせて表示する情報を絞りましょう。
営業担当者は今日動く案件と期限を確認する
担当者の画面は、次に何をするか分かる構成が基本です。自分の未完了タスク、期限が近い提案、連絡が途切れた案件を優先して表示します。
金額順だけで並べると、小さな案件の期限を見落とす場合があります。重要度と期限を分けて確認できる一覧が役立つでしょう。案件を開いたとき、顧客との約束や直近の履歴まで確認できるようにします。
自分の目標との差も表示できますが、結果だけで終わらせないことが大切です。不足を埋めるために、どの案件を進めるかを判断できる画面にしてください。
管理職は停滞・負荷・支援が必要な案件を見る
管理職は、チームの不足や偏りを確認します。担当者別の案件数だけでなく、期限切れ、長期停滞、支援依頼の状況を見ると有用です。
案件が集中している担当者には、提案準備や社内調整を支援する余地があります。失注が増えている場合も、担当者の努力不足と決めつけないでください。顧客層や引き継ぎ条件、商品との適合を確認しましょう。
順位表だけでは、難しい案件を引き受ける人が不利になる場合があります。経験、担当領域、案件構成の違いを踏まえ、育成と配置に使うことが重要です。
経営層は着地見込みと事業上のリスクを把握する
経営層には、目標との差と着地見込みを整理して示します。商品や部門の偏り、大口案件への依存、受注時期の遅れも確認対象です。
確定した受注と、未受注の見込みを明確に分けてください。楽観的な案件を合算した数字だけでは、人員や支出の判断を誤る可能性があります。見込みの増減理由まで説明できる構成が望ましいでしょう。
営業部門の数字を経営会議で使う際は、財務の実績との違いも示します。対象期間、計上基準、通貨などの差が残る場合は、注記して扱ってください。
数字を読む前に集計条件とデータ品質を揃える
きれいなグラフでも、入力や集計条件が揃っていなければ判断を誤ります。見た目を整える前に、数字が何を表すかを確認しましょう。
集計日・期間・対象案件を指標ごとに明示する
案件の作成日、受注予定日、実際の受注日は別の項目です。どの日付で集計するかによって、同じ期間でも結果が変わります。
例えば、今月作成した案件と、今月受注予定の案件は別の集団です。前月との比較では、月の途中と締め後の数字をそのまま比べないでください。営業日数や、対象商品を変えた影響も確認しましょう。
画面には期間、部門、商品、除外条件を表示します。担当者が各自でフィルターを変えられる場合、会議前に共通の状態へ戻す手順が必要です。
進行中案件と確定した結果を混ぜない
進行中案件の段階別件数は、ある時点の残高です。一定期間で受注や失注した案件の結果とは、見ている対象が異なります。
ファネルの形が細くなっていても、そのまま各段階の移行率とは言えません。移行率を調べるなら、同じ期間に入った案件を追い、その後の進み方を確認します。途中の段階を飛ばした案件や、戻った案件の扱いも決めてください。
過去の着地予測を検証するには、その時点の記録が必要です。現在の受注予定日で過去を再集計すると、当時の予測とは違う結果になるため注意しましょう。
空欄・重複・古い案件を定期的に点検する
数字の信頼性を保つには、入力の不備を見つける仕組みが必要です。担当者不明、金額未入力、期限なし、長期未更新を一覧にします。
重複した案件を削除する前に、別商品や別契約ではないか確認してください。複数部門が同じ案件を管理する場合は、主担当と集計対象を決めます。受注を二重に数えないため、案件IDや契約IDの関連付けも重要です。
未入力を一律にゼロとして扱うと、実態より金額が低く見える場合があります。未確定とゼロを分け、不足情報の件数も見えるようにしましょう。
更新時刻と閲覧権限による違いを確かめる
SFAへ入力した内容が、すぐにすべての画面へ反映されるとは限りません。データ取り込み、集計、ダッシュボード更新の時刻を確認してください。
HubSpotの公式ヘルプでも、レポートの更新やダッシュボードのアクセス設定を案内しています。機能や操作方法は製品ごとに異なるため、会議前に更新状態を確かめましょう。同じ画面でも、利用者の権限により見えるデータが違う場合があります。
担当者と管理職で数字が違うときは、まず期間、条件、権限、更新時刻を照合します。数字を合わせるために必要以上の権限を渡すことは避けてください。出力したファイルや画面の共有先にも、同じ注意が必要です。
ダッシュボードの作成は判断したい問いから始める
使う画面を作るには、現場の疑問を集計条件へ落とし込みます。最初からすべてのKPIを並べず、会議で繰り返し使う問いから始めましょう。
目的・指標・元データ・担当者を対応させる
まず、画面を見て決めたいことを言葉にします。その問いに必要な指標と、元になる入力項目を対応させてください。
以下は、提案後の停滞を減らしたいチームの設計例です。数値目標を設定する前に、同じ条件で測れるかを確認しましょう。
- 判断したいこと:支援が必要な提案案件はどれか
- 見る数字:提案後の経過日数と次回予定の未設定件数
- 元データ:提案日、次回予定日、案件担当者
- 確認する明細:対象案件と直近の顧客とのやり取り
- 行動する人:案件担当者と支援する上司
新しい指標を追加するときは、誰が入力と管理を担うかも決めます。画面の所有者だけでなく、定義を変更する責任者も置いてください。
レポートの明細を確かめてからグラフを選ぶ
集計元のレポートを作り、まず明細が意図どおりか確認します。件数と合計金額を、元の案件一覧と照合してから表示を整えましょう。
時系列の変化には折れ線、部門や商品の比較には棒グラフが使いやすい構成です。目標との差は、数値と進捗表示を組み合わせると確認しやすくなります。円グラフへ多数の区分を詰め込むと、違いを読みにくくなるため避けてください。
色の意味を統一し、異常の判断を色だけに頼らないことも大切です。グラフの近くに単位、対象期間、更新時刻を置くと、説明の負担が減ります。
絞り込みと案件明細への移動を用意する
合計値から対象案件へ移れなければ、別の検索作業が発生します。部門、担当者、商品など、原因を調べる際に必要な絞り込みを用意しましょう。
例えば、受注率が下がったときに、特定商品の失注案件へ進めると確認が容易です。案件の詳細から、失注理由と商談記録を読める構成にします。分析画面だけで原因を断定せず、現場の記録に戻ってください。
表示が重い場合は、対象期間や集計対象を見直すことも必要です。使わないグラフを外し、負荷の高い分析は別のレポートに分ける方法もあります。
営業会議では変化を確認して行動と期限を決める
ダッシュボードを使う会議では、数字の読み上げを減らしましょう。変化の理由を確認し、誰が何をするか決める時間を確保します。
目標との差から対象案件と原因の仮説を絞る
まず、目標との差や前回からの変化を確認します。次に対象を絞り、データの誤りか営業上の問題かを切り分けましょう。
例えば、受注予定額が減っていれば、失注、予定日の延期、金額変更に分けて確認します。延期が多い場合は、顧客の承認待ちか、自社の見積もり遅延かで対策が変わります。原因は記録と担当者の説明で確かめてください。
相関がある数字を、そのまま原因と決めつけないことも重要です。訪問が多い案件ほど受注していても、見込みが高いため訪問した可能性があります。
支援内容・担当者・期限を案件に戻して残す
会議で決めた行動は、該当する案件へ記録します。議事録だけに置くと、担当者の日々の確認から抜ける場合があるためです。
以下は、条件調整で停滞している案件への対応例です。実際の顧客との約束や社内権限に合わせて、行動を具体化してください。
- 営業担当者:顧客が未確認の契約条件を整理する
- 上司:値引き以外の提案条件を検討する
- 関係部署:回答できる納期と制約を確認する
- 次回確認時:対応結果と次の判断を記録する
期限までに結論が出ない場合は、待っている相手と再確認日を残しましょう。完了したタスクも結果を記録し、実行しただけで終わらせないことが大切です。
次回は結果を検証し使わない指標を見直す
次回の会議では、前回決めた行動が実行されたかを確認します。数字が変わった場合も、対象案件の変化と合わせて見てください。
短期間の売上だけで、施策の成否を判断しないようにしましょう。提案準備の遅れが減るなど、受注より手前の変化を確認する方法もあります。案件数が少ない区分では、割合と実件数を併記することが有用です。
AIの要約や予測を使う場合も、根拠となる案件と入力状況を確認します。予測を確定情報として扱わず、担当者が確認する判断材料にしてください。誰も行動に使っていない指標は、削除や変更を検討しましょう。
SFAの数字を次の営業行動へつなげよう
SFAのダッシュボードは、受注額を飾る画面ではなく、営業の判断を助ける道具です。成果、案件、活動の関係を捉え、必要な案件へ戻れる構成にしましょう。
集計条件、更新時刻、権限を揃えたうえで、役割ごとに見る数字を絞ってください。会議で担当者と期限を決め、結果を案件へ残すことで、数字を営業改善に使いやすくなります。

