更新日:2024/11/27
予実管理とは?必要性や実行手順、ポイント、おすすめのツールを解説
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
企業は独自に設けた経営目標を達成するため、営業活動などに取り組みます。経営目標を達成するには定期的に予算と実績を比較し、目標を達成するための施策を講じる必要があります。このような一連の作業が予実管理です。予実管理を適切に行えば経営目標達成への道筋が見えるでしょう。
本記事では、予実管理の概要や予実管理が求められる理由、実行する手順、ポイントなどを解説します。後半では予実管理におすすめのツールも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次はこちら
予実管理とは
予実管理とは設定した予算と実績を管理することで、予算実績管理とも呼ばれます。予実管理は、経営者や部門責任者が経営計画や財務管理をするために必要な管理会計業務の一種です。
企業が経営目標を達成するためには、予算と実績のバランスがどのように推移しているか注視が必要です。予実管理で、目標とのズレを把握することで軌道修正につながります。
予実管理と予算管理の違い
予実管理と似た言葉として挙げられるのが予算管理です。両者は同じ意味で用いられるケースもありますが、予算管理は一般的に年度ごとの企業の予算計画を策定することを意味します。予算管理と予実管理は目的と役割が異なると言えるでしょう。
予実管理が求められる理由
予実管理が求められる理由は主に次のとおりです。
- 自社の状況を数字に基づいた分析が可能
- 経営管理の機能の一つ
- 業績予想の開示に必要
自社の状況を数字に基づいた分析が可能
予実管理が求められる理由の一つが、自社の状況を数字に基づいて分析するためです。
予実管理をしていない場合、自社の状況は漠然としかわからず、経営目標を達成するために具体的な施策を講じられません。予実管理に取り組めば、目標とする予算に対して足りていない数字を明確に把握できるため、どのような施策で数字を作るか検討しやすくなります。
反対に、予算に対して目標を達成したときも数値が見えれば、成功の要因を分析するのにも役立ちます。
経営管理の機能の一つ
企業は経営目標を達成するために、経営資源を最大限に活用し事業で成果を上げなければなりません。そのために必要なのが経営管理です。経営管理は「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源を適切に配分し、調整や総括を行い、事業が計画通りに進捗しているか管理します。経営管理は次の4つの機能があり、予実管理はモニタリング機能として重要です。
機能 | 詳細 |
---|---|
プランニング機能 | 適切な目標や課題を設定する |
コントロール機能 | 目標や課題を達成するために進捗を管理する |
モニタリング機能 | 予定どおり目標を達成できているかを確認する |
コーディネート機能 | 各事業間で発生する利害の衝突を調整する |
このように、予実管理は経営管理を実施するために欠かせない位置付けになります。
業績予想の開示に必要
株式上場を目指している企業の場合、上場審査において予実管理のプロセスをチェックされます。上場後には、ステークホルダーに対して業績予想や財政や経営の状況を開示する必要があります。投資家は、業績予想のベースになっている予算と実績を投資判断の材料とするため、業績予想の開示に予実管理の必要性は高いです。
予実管理の手順
予実管理を実施する手順は主に次のとおりです。
- 目標を立てる
- 予算を設定する
- KPIとスケジュールを設定する
- 月次決算をする
- 予算・実績を分析する
目標を立てる
予実管理を実施するためには、まず予算の目標を立てましょう。予算目標を立てる際は自社が成長していくことと、達成の可能性を両立させることがポイントです。自社が大きく成長することを目標としても、実現できなければ予実管理によって分析する意味がありません。目標は「達成するのは困難ではないが、努力を要する」程度を目安として設定しましょう。
予算を設定する
予算目標を立てたら実際の予算を設定します。予算設定は過去の実績をベースにするのが一般的です。繁忙期と閑散期の差が大きい業種の場合は、差を踏まえたうえで設定しましょう。
KPIとスケジュールを設定する
予算目標と実際の予算を設定したら、KPIとスケジュールを設定します。KPIとは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」の略で、最終目標へ向かうプロセスの目標値のことです。KPIを設定することで、どのように目標を達成するか具体的なアクションを明確にできます。
漠然と目標達成に向かってスケジュールを立てるのではなく、細かい工程をKPIによって明確化することで、スケジュールに具体性を帯びてきます。また、万が一トラブルが発生した際もスムーズに軌道修正が可能です。
月次決算をする
予実管理は毎月実行していくのが一般的です。月次でチェックしないと予算と実績がどれくらい離れているかの発見が遅れてしまい、精度が低下してしまいます。月次決算にあたり、保険料や減価償却費といった1年分を一括で計上する費用は、月ごとに配分しましょう。
月次決算の結果は関係者だけでなく、多くの従業員に共有することがポイントです。予算と実績の差を従業員が把握できるため、目標達成に向けた努力目標を把握できます。
予算・実績を分析する
月次決算の結果が出たら予算と実績を分析します。設定した予算と実績がかけ離れているようであれば、その要因を突き止めましょう。
予算と実績を見る際に売上額だけに着目すると、良好な結果が現れるかもしれません。しかし、予実管理にあたっては、売上額から販売管理費などの経費を差し引いた営業利益に着目します。
大きくマイナスの差異が出たのであれば、その原因が一時的なものか、長期的に影響を及ぼすかどうかを確認します。反対にプラスの差異が出ている場合は、利益が出た要因を分析し次期への施策に役立てましょう。
予実管理を進めるためのポイント
予実管理を進めるためのポイントを解説します。
- 予算は適切に設定する
- 小まめに状況を確認する
- PDCAサイクルを回す
予算は適切に設定する
予実管理を進めるうえでは、予算を適切に設定することが大切です。設定する予算は従業員のモチベーションに大きく関係します。達成できそうにもない目標や、安易に達成できてしまう目標を設定してしまうと、従業員のモチベーションを低下させ、生産性に影響する恐れもあります。
そのため、達成が不可能ではない適切な予算目標を設定して、従業員の意欲を引き出しましょう。
小まめに状況を確認する
予実管理は小まめに状況を確認することが大切です。時間が経過していくと予算と実績とが徐々に乖離していってしまうため、リアルタイムに予算と実績の管理を実行しましょう。早い段階で問題に気が付けば、早期の解決や軌道修正などの対策が可能です。
PDCAサイクルを回す
予実管理を実施する際はPDCAサイクルを回しましょう。PDCAサイクルは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」を繰り返す一連の流れのことです。PDCAサイクルを何度も回していくことで、業務の効率化や改善につなげることが可能です。
PDCAサイクルでは、まず予算目標を設定して実行に移します。その後、予算に対してどれくらい実績が追いついているのか、達成度合いを評価します。評価で明らかになった課題に対しての改善策を実行し、また検証・評価するという繰り返しです。
予実管理に失敗してしまう理由
予実管理は企業が経営目標の達成に重要は役割がありますが、実行しても管理がうまくいかないケースもあります。予実管理に失敗してしまうのは以下のような理由があります。
- 細かな差異を気にしすぎている
- 予算目標の達成にこだわりすぎる
- 必要な情報を収集・分析できていない
- 経営層と現場とのコミュニケーションが不足している
細かな差異を気にしすぎている
予実管理に失敗してしまう理由の一つが、細かな差異を気にしすぎていることです。予実管理は最終目標に向かっている途中の現状を把握して、課題改善につなげるために行います。差異の確認や分析をすること自体が目的化し、木を見て森を見ずの状態にならないように注意しましょう。
予算目標の達成にこだわりすぎる
予算目標の達成にこだわりすぎることも予実管理に失敗してしまう理由です。予算目標を達成するのは重要ですが、数字の達成にばかりにこだわりすぎてしまうと、従業員が疲弊したり売上を水増ししたりといったリスクにつながりかねません。
適切な目標を立てることも大切ですが、現実的に難しい状況であれば会社の方針と調整し目標を修正することも必要になるでしょう。
必要な情報を収集・分析できていない
実績を分析するのに必要な情報を収集できていなければ、予実管理の精度は下がってしまいます。情報が不足している状態では、正確な分析はできません。
また、必要な情報を収集できていたとしても、業務過多や人手不足により分析にまで手間が回らないケースもあるでしょう。マイナスの原因がわからないと自社が抱える課題の発見が遅れてしまいます。
経営層と現場とのコミュニケーションが不足している
経営層と現場とのコミュニケーションが不足していることも、予実管理が失敗する理由の一つです。例えば、経営層が立てた目標が現場に浸透していない、予算と実績に差異が発生した理由を現場が経営層に説明できていないなどのケースが挙げられます。
予実管理には予実管理表が必要
予実管理には予実管理表を用います。予実管理表は組織単位やプロジェクト単位で、予算目標と実績を一覧にできます。Excelもしくは専用のツールを用いて作成するのが一般的です。
Excelは費用をかけずに、自社ならではの独自フォーマットの表を作成できます。一方、専用のツールであれば表作成だけでなく、データの収集・分析、グラフ出力なども可能です。使用するツールについては後述で詳しく説明します。
予実管理表に記載する主な項目
基本的な予実管理表の形式と記載する項目を説明します。縦軸と横軸のそれぞれの項目は以下のとおりです。
当月予算 | 当月実績 | 予算差異 | 達成率 | ||
売上高 | 売上原価 | ||||
売上総利益 | 給料手当 | ||||
福利厚生費 | |||||
接待交際費 | |||||
旅費交通費 | |||||
通信費 | |||||
水道光熱費 | |||||
消耗品費 | |||||
租税公課 | |||||
減価償却費 |
Excelの場合、インターネットから予実管理表のフォーマットをダウンロード可能です。自社で作成する手間を省くのであれば、無料フォーマットの活用も検討してみましょう。
予実管理に用いられるツールの種類
予実管理表の作成など、予実管理に用いられるツールには以下の種類があります。
- Excel
- Googleスプレッドシート
- 予実管理ツール
それぞれのツールにメリット、デメリットがあるため、導入前に把握しておきましょう。
Excelのメリット・デメリット
前述で説明のとおり、予実管理表はExcelで作成が可能です。Excelは多くの企業で使用されているため、新たにツールを導入するコストが発生しません。さらに、なじみのあるツールであるため、従業員が操作性で悩む可能性も少ないでしょう。
一方、Excelはデータ容量が多くなるとパフォーマンスが低下し、作業時にストレスを感じる恐れがあります。手入力なのでヒューマンエラーも起こりやすいでしょう。
少ないデータを扱うケースであればExcelによる予実管理がおすすめです。
Googleスプレッドシートのメリット・デメリット
Googleが提供しているGoogleスプレッドシートも予実管理表を作成可能です。Excelはオフィス製品を購入する必要がありますが、GoogleスプレッドシートはGoogleアカウントを作成・保有していれば無料で利用できます。
Googleスプレッドシートは、URLを送るだけで他のユーザーとデータを共有できるうえに同時編集も可能なので、複数人で使用する場合に使い勝手が良いツールです。
しかし、GoogleスプレッドシートもExcelと同じく、手入力なのでヒューマンエラーが起こりやすいでしょう。また、閲覧権限の設定を誤ると、不特定多数の人が閲覧できる状態になり、機密情報の漏えいにつながる恐れがあるため注意が必要です。
予実管理ツールのメリット・デメリット
予実管理を行う際に活用されるのが予実管理ツールです。ツールを導入することで次のようなメリットが期待できます。
- データを一元化できる
- 作業を自動化できる
- 他のツールと連携できる
- 大容量のデータもスムーズに処理できる
- 業務の属人化を防げる
予実管理ツールを活用すれば、データを一元管理できるうえ、大量のデータをスムーズに処理できるようになります。自動化や他ツールとの連携も可能なため、予実管理業務を効率的に進められるでしょう。また、ツールを活用することで社内の誰もが集計や分析などの業務を行いやすくなるため、属人化の防止にもつながります。
しかし、導入にあたって初期費用やランニングコストが発生することや、操作になれるまでの期間が必要になることなどのデメリットも把握しておきましょう。
予実管理ツールの代表的なものに「BIツール」「SFAツール」の2種類があるので、それぞれ紹介します。
BIツール:企業が持つデータを収集・分析する
BIツールは企業が保有するデータを収集・分析するツールです。膨大なデータの中から必要な情報を抽出し、すぐに分析してレポーティングが可能なので、迅速な企業の意思決定につながります。リアルタイムに情報が更新されグラフや表で確認できるため、短期的な予実管理に向いています。
SFAツール:案件管理や顧客管理によって営業活動を効率化する
SFAツールは案件や顧客管理によって営業活動を効率化するツールです。SFAツールを活用すれば、予実管理に必要な情報を収集できるうえに、営業担当者の行動や商談の進捗状況も把握できます。
予実管理ツールの選び方
専用のツールによって予実管理を実施するのであれば、次のような点に着目して選びましょう。
- 自社の事業規模や業種
- 導入形態
- 他のシステムとの連携
- 導入後のサポート体制
自社の事業規模や業種
予実管理ツールを選ぶ際は自社の事業規模に応じたものを選ぶのがポイントです。予実管理ツールをいっても搭載している機能の幅や料金形態はさまざまなタイプがあります。大企業なら大人数や複数拠点での使用を想定しているツール、中小企業なら必要最低限の機能を厳選しているツールなど、自社の規模と必要性に応じて検討しましょう。
また、自社の業種に合っているかどうかもポイントです。一般的な事業に対応できる汎用型、特定の業種に適した業界特化型の2種類があるため、どちらのタイプか確認しましょう。
導入形態
導入形態も予実管理ツールによって異なります。導入形態はオンプレミス型、クラウド型、パッケージ型の3パターンに分かれます。ツールの導入にかかる初期費用を抑えるのであれば、クラウド型がおすすめです。クラウド型は自社でシステムを構築する必要がなく、メンテナンスも提供会社が行うため、初めての導入にも適しています。
一方、初期費用はかかるものの、自社の状況に応じたカスタマイズを希望するのであればオンプレミス型の導入がおすすめです。
他のシステムとの連携
予実管理ツールは他のシステムと連携が可能ですが、ツールによって連携できるシステムは異なります。例えばGoogleスプレッドシートと連携できるツールもあれば、営業支援システムと連携できるツールもあります。
また、連携可能なシステムを確認すると同時に、連携方法の確認も大切です。システムとの連携方法は主に次の種類があります。
連携方法 | 詳細 |
---|---|
データベース連携 | データベースを直接更新する連携方法でリアルタイム処理に向いている |
ファイル連携 | CSVやXMLファイルを連携先へ転送する |
Web API連携 | システムごとのデータだけでなく、搭載されている機能も連携できる |
導入後のサポート体制
予実管理ツールを導入する際に、サポート体制が整っているかどうかは大きなポイントです。ツールを導入したとしても、実際に使用する従業員が操作に悩んでしまったり、トラブルが発生したりする可能性があるためです。
ツールの提供元によっては、ツールの操作方法だけでなく、運用体制についてもサポートしてくれるケースがあります。どのようなサポート体制を提供しているかを確認しておきましょう。同時に電話やメールなどどのような問い合わせ窓口を用意しているかの確認もポイントです。
また、なかには無料のトライアル期間を設けている提供元もあります。トライアル期間を活用して事前に操作性を確認しておけば、導入後もスムーズに運用を進められます。
予実管理を行って自社の状況を把握しよう
予実管理は予算と実績を管理して差異を把握・分析することで、企業の経営目標の達成に欠かせないものです。予実管理を行うことで、現状の業績や課題が可視化され、改善や施策を講じるのに役立ちます。
予実管理を行う際は、ExcelやGoogleスプレッドシートで予実管理表を作成可能ですが、BIツールやSFAツールを使うことで効率的に進められます。ツールを選ぶ際は、自社の事業規模や希望する導入形態などに応じたものを選びましょう。
SFAツールを検討するのであれば「ネクストSFA」がおすすめです。ネクストSFAを活用すれば、見込み顧客の獲得から商談管理、顧客管理までを一気通貫で進められます。見込み顧客獲得から予実管理までを一括で行いたいという方は、ぜひご相談ください。