更新日:2020/08/20
evmとは?evmをプロジェクト管理に活かして小コストで成果を出そう!
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
プロジェクトのマネジャーやリーダー経験がある方は、メンバーから
「予定より少し遅れてます」
「来週までには終わりそうです」
「当初予定していた作業量より多そうです」
などの報告を受けたことがあるのではないでしょうか?
しかし、これらの情報だけでは、プロジェクトの進捗に問題があるかないかを判断することは難しい場合があります。
そのため、進捗を管理するための客観的な指標が必要です。
そこで、今回は「evm」というプロジェクトの進捗管理を行う手法を紹介していきます。
プロジェクト管理に行き詰っている方やこれからプロジェクト管理を行う方などは是非参考にしてみてください。
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evmとは?
evmとは、Earned Value Management(アーンドバリューマネジメント)の略です。
プロジェクトに対して、「どれだけの時間がかかるか?」という時間的指標ではなく、「必要労力や人件費はいくらか?」というコスト的指標で進捗を管理する手法です。
プロジェクトを管理するリーダーやマネージャーがプロジェクトマネジメントを行う際に有効的な手法の一つです。
目標や作業量への到達度をコストに変換したEV(Earned Value:出来高)という概念で考えます。
evmのメリット
では、実際にevmをプロジェクトの管理に取り入れるとどのようなメリットがあるのでしょうか。
プロジェクト管理の指標が増える
evmをプロジェクト管理に取り入れることで、スケジュールとコストの2つの指標で進捗状況を把握することが可能となります。
この2つで管理することで、少ないコストで最大限の成果を出すことが可能かもしれません。
例題を使ってみるとイメージしやすいと思います。
例題
チームメンバーに対して今週末までに仕上げるよう作業を依頼したとします。
しかし、チームメンバーから週末になった時点で「来週には終わります」という報告を受けました。
この場合、遅れることは理解できるものの作業完了までの具体的な作業量を客観的に把握することは難しいでしょう。
ここでevmの出番です。
チームメンバーの給料と労働時間から1時間当たりのコストを計算し、作業完了までの時間からコストを算出できます。
このように進捗管理を行うことで、作業量に対していくらコストがかかっているのかを客観的に把握することが可能となります。
組織として求められるのは、「いかに少ないコストで成果を出せたか」です。
このようにevmを活用することで客観的に状況が把握できるので、プロジェクト管理を行うマネージャーやリーダーの正しい判断に役立てることができるかもしれません。
プロジェクトの予測に役立つ
また、evmを活用することで、現状の把握だけではなく、進捗の予測にも活かすことが可能となります。
先ほどの例題に当てはめてみましょう。
当初プロジェクトマネージャーが想定していたスケジュール通り進まなかった場合には、
当初の計画とのズレがどの程度発生しているかを客観的に捉えられます。
目標を達成するまでの総時間や総コストを再検討し、その後の進捗を予測することも可能となります。
チームメンバーに対しても「このペースだと遅れそうだから頑張ろう」などといった抽象的な指示ではなく「このままだと予算がいくらオーバーしている上に、スケジュールも遅れているから、一度計画を見直そう」といった具体的な提案をすることもできるかもしれません。
evmのデメリット
しかし、evmが世の中の全てのプロジェクト管理に活かせる訳ではありません。
もちろん不向きなケースもあります。
以下2つの事例を元に見ていきましょう。
evmが不向きなケース
事例1~納期が明確でない場合~
例えば、あなたが製薬会社の研究所で、これから何年かかるか分からない新薬の開発プロジェクトチームを任されたとしましょう。
新薬の開発がゴールにはなるものの、具体的な納期やスケジュールなどは決まっていないため、コスト換算するのも難しくなります。
事例2~予算が明確でない場合~
極端な例ですが、ボランティア活動などのプロジェクトは非常にevmが難しいです。
実際に活動する人の時給やコストも発生せず、成果を求めるものではないので、こちらも不向きなケースとなります。
基本的な5つの指標
ここからはevmを導入するに当たって重要な、基本的な5つの指標について紹介していきます。
例題を活用しながらの方が、イメージが湧きやすいと思うので、「営業支援ツール開発」を例題として考えてみましょう。
ここでは、「プロジェクト予算100万円で3ヶ月後に営業支援ツールの完成」という目標を想定します。
EV (Earned Value:出来高)
EVとは出来高のことで、現時点までの成果の実績値です。
例えば「営業支援ツールを開発するにあたり、1カ月現在での出来高はいくら」というように、期間を限定し、出来高を算出します。
作業の到達度を時間ではなく、コストに変換する考え方です。
PV (Planned Value:計画価値)
PVとは計画価値のことで、計画の作成時に見積もった予算で、ある特定の時点までに完了すべき作業にかかる総予算総コストです。
例えば「営業支援ツールを開発するにあたり、1カ月で必要な予算はいくら」といった、人件費などのコストを予想して算出することです。
AC (Actual Cost:実コスト)
ACは実コストのことで、ある特定の時点までに投入した実際のコストの合計値です。
例えば「営業支援ツールを開発するにあたり、1カ月で実際にかかったコストはいくら」と算出することです。
業務の一部を外注した場合は外注費、チームメンバーが残業をした場合は残業代など、その時点までの全てのコストを合算します。
AC(実コスト)に対するEV(出来高)比率をCPIと呼び、
プロジェクトの進行中にコストが予算に収まっているか超過しているかを知る指標としてよく利用されます。
CPIとはCost Performance Indexの略で「コスト効率指数」という指標になります。
「EV÷AC=CPI」という計算式で表すことが可能です。
SV (Schedule Variance:スケジュール差異)
SVはスケジュール差異のことで、EV(現時点での出来高)と、PV(プロジェクト計画時の想定予算コストの合計)の差分になります。
つまり「EVーPV=SV」という計算式で表されます。計算結果がプラスの場合は、スケジュールは早く進んでおり、マイナスの場合は、スケジュールが遅れているということになります。
例えば、
「営業支援ツール開発にあたり、2カ月目までの出来高(EV)が80万円」
「営業支援ツール開発にあたり、2カ月目までにかかると考えられる予算(PV)が70万円」なら
「80万円(EV)ー70万円(PV)=10万円(SV)」になるので、スケジュールは早く進んでいるということになります。
CV (Cost Variance:コスト差異)
CVはコスト差異のことで、AC(ある特定の時点までに投入した実際のコスト)と、EV(現時点での出来高)との差です。
つまり「EVーAC=CV」という計算式で表されます。
計算結果がプラスの場合は、その時点までのコストは予算内であり、マイナスの場合は、予算をオーバーしているということになります。
例えば、
「営業支援ツール開発するにあたり、2ヶ月目までの出来高(EV)が70万円」
「営業支援ツール開発するにあたり、2カ月目で実際にかかったコスト(AC)が90万円」の場合、
「70万円(EV)ー90万円(AC)=ー20万円(CV)」とマイナスになり、予算内に収まっていないことが分かります。
以上がevmの基本的な5つの指標となります。
evm導入までのイメージが湧いたのではないでしょうか?
まずはこの5つの指標をプロジェクト管理へ導入してみることをオススメします。
まとめ
evmの活用によってプロジェクトを時間的指標だけではなく、コスト的指標でも管理してみてはいかがでしょうか。
evmには、下記の基本となる5つの指標があるので内容を理解し、プロジェクト管理に役立ててみてください。
・PV (Planned Value:計画価値)
・AC (Actual Cost:実コスト)
・SV (Schedule Variance:スケジュール差異)
・CV (Cost Variance:コスト差異)
もし、あなたのプロジェクトにとってevmが有効な手法である可能性があるのであれば、
是非導入し、少ないコストで最大限の成功を掴んでみてください。
なべしょーこの記事の執筆者