更新日:2024/07/26
クラウドCRM(顧客管理システム)を比較!導入メリットと使い方
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
クラウドCRM(Customer Relationship Management)とは、クラウドSaaSのサービスとして提供される顧客管理システムのことです。
CRMで顧客との関係を一元管理することで、全社員が情報にアクセスして効率的な営業ができます。
CRMには「具体的にどのような機能があるのか」「クラウドだとどういうメリットがあるのか」について解説していきますので、クラウドCRMの導入を検討する際、ぜひご一読ください。
CRM(顧客管理システム)でできること
CRM(顧客管理システム)では具体的にどのようなことが実現できるのでしょう。CRM導入のメリット・デメリットとともに基本的な機能を解説します。
CRMを導入するメリット
CRMを導入する主なメリットを4点ご紹介します。
- 顧客の情報を一元管理して全社員にリアルタイムで情報共有ができる
- 見込み客を抽出しての効果的なマーケティングが可能
- 成約、失注などのケーススタディから成約につながる条件を分析できる
- モバイルで外出先からも情報を活用でき、情報入力もリアルタイムで行える機動性の高さ
最も大きなメリットは、ベテランの営業担当のみが知っていた顧客情報をすべてCRMで一元管理すること、初めて顧客にアプローチをかける新人の営業担当でもポイントを押さえた営業が可能になる点です。
営業担当は職場に戻らなくても日々の営業活動内容を入力でき、上司はリアルタイムに営業の進捗が管理できます。
蓄積された営業情報を元に、見込み客に対する効果的なアプローチや、失注の原因を分析して次の成功へつなげる施策を検討するといったデータの活用も可能です。
このように、CRMは営業活動を支援し、より効率的な営業を可能とする便利なツールといえるでしょう。
CRMを導入するデメリットはある?
では、逆にCRMを導入するデメリットには何があるでしょうか。デメリットも箇条書きでご紹介します。
- コストの増大
- 費用対効果を明確化しづらい
- 現場の営業サイドで日々入力の手間がかかる
システムを導入する分、どうしてもコストは増大します。これまでつけていた日報に比べて入力の手間が増大すると感じて、営業情報の入力にストレスを感じる営業もいるでしょう。費用対効果を明確化しづらい点もデメリットです。
コスト以上に効果が出ているかどうかは、測定する数値をきちんと決めて、定期的に計測していくしかありません。
また、現場の営業担当には「日報記入で外出先から職場に戻ってくる必要がない」という利便性を伝えて入力が定着するよう推進するコストも見込んでおく必要があります。
CRMの基本的な機能
CRMの基本的な機能は以下の通りです。
- <CRMの主な機能>
- 営業活動支援
- 顧客サポート支援
- マーケティング支援
それぞれの機能について、もう少し詳しく見ていきましょう。
営業活動支援
CRMには、営業に活動に役立つ機能がいくつか備わっています。
- 顧客ごとの商談情報一元管理
- 顧客情報の参照や分析などさまざまなアウトプットでのデータ参照
- 顧客情報を活用したセミナー開催などのメール配信
CRMと同様に営業活動を支援するセールスフォースオートメーション(SFA)とは、機能的に被る部分もあります。SFAは、営業活動支援が主な目的であり、顧客との関係管理を行うCRMとは若干方向性が違いますが、営業の効率化という最終目標は同じです。
SFAと被る機能としては、顧客ごとに商談情報や進捗状況を一元管理して、途中まで進んだ状態の引き継ぎも簡単に行える点が挙げられます。
また、蓄積した顧客情報から、これまでの売上傾向や問い合わせの有無など、これから営業に行く際に役立つ情報を分かりやすい形でアウトプットする機能も両者共通の機能です。
CRMにはなくSFAにある機能は、今後のスケジュールやToDo管理など、営業活動の効率化につながる機能です。CRMの独自機能は、顧客との関係を強化する機能として顧客情報を活用してセミナー開催などの定期メール配信などができる機能が挙げられます。
CRMは、顧客との関係を強化することで営業を支援し、SFAは営業活動そのものの効率化に力点を置いている点がそれぞれの相違点です。
顧客サポート支援
顧客サポート機能とは、その顧客の購買情報や問い合わせ履歴を蓄積し、今後の製品開活か生かしたり、顧客からの問い合わせに迅速な対応ができるようにサポートしたりする機能です。
お問い合わせ情報はコールセンターのオペレーターなど、実際に顧客の問い合わせを受け付ける担当が入力します。
顧客に対するきめ細かな対応により、自社のファンとなってくれる優良顧客を増やすことが可能となるのです。
マーケティング支援
CRMは、マーケティングオートメーション(MA)とも機能的に共通点があります。定期的なメール配信やイベント管理などが挙げられます。顧客の見込み度によって配信する内容やイベントの種類を変えて、よりきめ細かな対応を自動化する機能は、CRMでもMAでも共通の機能です。
MAとCRMとの違いは、MAが見込み客の育成と選別を目的とするのに対し、CRMはリピーター(優良顧客)を育成する点にあります。
クラウドCRMならではのメリット
CRMの機能について説明してきました。ではクラウドならではのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
初期費用無料のものも!料金が安く導入しやすい
クラウドCRMの魅力は、導入コストの安さです。クラウドCRMは、月額で利用料金が決められていますが、初月は無料としている場合が多く、導入コストはほぼかからない場合もあります。
ただし、月額利用料の料金体系によっては月々かかる費用がかなり負担となる可能性もあるため、慎重に検討しましょう。
自社でのバックアップ・メンテナンス不要
クラウドでは、CRMシステム稼働に関わるインフラやプラットフォーム、アプリケーションの管理をサービス提供側が管理しています。
そのため、自社でのバックアップやメンテナンスの手間やコストがかかりません。重要な顧客情報を守るためのインフラに投資する余裕のない企業にとっては、非常に大きなメリットです。
マルチデバイス対応でどこからでもアクセス可能
クラウドCRMは、外回りの多い営業が職場外から利用することを考慮して、マルチデバイス対応をしています。そのため、外出先においてスマホやタブレットでいつでもCRMにアクセス可能です。なかなか自社に戻れない営業でも、常に最新の顧客情報を手軽に入手でき、より素早いアクションが取れるようになります。
【比較表】人気のクラウドCRMサービス7選
それでは、人気のクラウドCRMサービス7製品を、以下の観点から比較した表にまとめました。
- 初期費用
- 月額費用
- キャンペーンの有無(無料お試しや割引など)
これらのポイントは、クラウドCRMを選定する際に重要な比較ポイントですので、「自社にフィットするクラウドCRMはどれか」について知るためにもチェックしてみてください。
初期費用 | 月額費用:ユーザー/月 太字は、最も多く利用されているプラン | キャンペーン | |
Senses | Starterプラン100,000円~(導入初期設定サポート、メンバーへの導入研修含む) | 【年間契約】 5,000円 10,000円 エンタープライズプランは個別見積もり | 14日間無料 |
Sales Cloud | ― | 【年間契約】 3,000円 9,000円 18,000円 36,000円 | 14日間無料 |
Dynamics 365 | ― | 【月間契約】 12,510円 その他プランは個別見積もり | ― |
ちきゅう | ― | 【月間契約】 1,480円 2,980円 4,980円※最低10ユーザーより | 30日間無料 |
Zoho CRM | ― | 【年間契約】 1,440円 2,400円 4,200円 12,000円【月間契約】 2,160円 3,600円 5,400円 アルティメットは年払いのみ | 15日間無料 3ユーザーまでの無料プランあり |
WaWaD-Be | ― | 【月間契約】 300円 | 14日間無料 |
SanSan | ライセンス費用12ヶ月分
(既存の名刺をデータ化するための費用) | 【月間契約】 ライセンス費用: 50,000円~(社/月)Sansanスキャナ: 10,000円(台/月) | ― |
Senses
案件管理がドラッグアンドドロップという簡単な操作で行える点が魅力のクラウドCRM。取引先の顧客に対するアクションを管理できるようにもなっています。また、取引先企業の情報を自動で収集できる点や、カード形式で顧客情報を管理しているので直感的に分かりやすい点も評価ポイント。操作性の良いクラウドCRMをお探しの企業におすすめです。
Sales Cloud
SalesForceシリーズは、世界でトップレベルのシェアを誇り、10万社以上の導入実績のあるCRM/SFAシステムです。Sales Cloudは、そんなSalesForceシリーズの機能をクラウドで利用できるサービスで、顧客管理機能や営業支援機能はもちろん、社内コミュニケーション機能やメール一括送信機能などもあり充実しています。
導入実績を重視し、CRMだけではなくSFAの機能も導入したいと考えている企業や、MA機能も求めている企業におすすめです。
Dynamics 365
Microsoft社のクラウドCRMであるDynamics 365は、Microsoft Office製品のWordやExcelとの親和性が高い点が最大の特徴です。SFAやMAに近い機能も備えているほか企業の実情に合わせたプランの提案もするきめ細かさがあります。Microsoft Officeを社内のオフィス用ツールとして利用しつつCRMを取り入れたいという企業におすすめです。
ちきゅう
シンプルで使い勝手のよい、CRM/SFAシステムです。導入しやすい価格体系で、顧客管理機能やデータ分析機能が利用できます。30日間無料で使えるため、業界ごとの導入事例を参考にしながらじっくりとトライアルで使用感などを確認できる点が魅力。分かりやすいCRMシステムを探している企業におすすめです。
Zoho CRM
顧客データの管理や分析に力を入れている中小企業向けのクラウドCRMで、GoogleDocsやGmailとの連携がしやすくなっている点が機能面の大きな特徴です。年間契約と月間契約の料金体系があり、3ユーザーまでの無料プランもあるため、実験的に数ヶ月じっくりと使ってみたいと考えている場合におすすめします。
WaWaD-Be
1ユーザー当たり月額300円で導入できる、格安のクラウドCRM。入力フォームを自作して、情報の蓄積ができます。顧客管理、案件管理、問い合わせ管理などを好きな項目で作って集計などもできるので、自由度はかなり高い点が特徴です。
エクセルなどのフォーマットで情報を管理しているけれど、一元化して検索しやすくしたい場合や、導入・運用コストをできる限り抑えてまずは試してみたいという企業におすすめします。
SanSan
SanSanの大きな特徴は、属人的な管理になっている名刺を全社のデータベースとして活用することを主眼に置いている点です。ライセンス形態も他とは大きく違い、会社ごとのライセンス契約で、名刺を読み取るスキャナを最低1台以上導入することとなっています。
すでに蓄積されている名刺をデータ化するための初期費用として、ライセンス12ヶ月分が必要な点も他のクラウドCRMとは違う点です。
クラウドCRMサービスの選び方
ご紹介してきたようにさまざまなCRMサービスがありますが、自社に合うかどうかが最も重要です。
それでは、具体的にどんなことに気をつけて選べばよいのか、ポイントを3つ挙げます。
- 目的に合った機能が充実しているか
- 同業界での導入実績があるか
- ユーザーである現場が運用しやすいか
では、順番に見ていきましょう。
目的に合った機能が充実しているか
機能豊富なクラウドCRMは、それだけ月額利用料も高価です。
しかし、実際に自社で使いたい機能はそんなに必要でしょうか?逆に、格安のクラウドCRMを選んでも、自社で使いたい機能に不足があっては、導入の意味はありません。
自社でCRMを導入する目的を明確にして、その目的を達成する機能が充実しているかどうかという観点で導入するクラウドCRMを選ぶようにしましょう。
同業界での導入実績があるか
クラウドCRMを提供する各社は、公式サイトで導入事例を紹介しています。
また、問い合わせをすれば、自社と同じような業界での導入実績・事例を確認することも可能です。
同じような業界での導入実績があれば、実績や知識も豊富で充実したサポートが受けられますので、同業界での導入実績があるかの確認は必ず行いましょう。
ユーザーである現場が運用しやすいか
現場の営業やオペレーターが顧客の情報をどれだけこまめに入力するかどうかという点は、CRM導入を成功させるカギです。使い勝手の良いCRMなら、有用な顧客情報が蓄積され、システムを導入した効果が発揮されます。
コストが安く機能が充実しているクラウドCRMを導入しても、使い勝手が悪いと顧客情報が集まらず、CRMを活かしきれません。
3つのポイントを踏まえて、自社の悩みや課題を整理することが、CRM導入を成功させる第一歩といえるでしょう。
クラウドCRMの機能の使い方
最後に、クラウドCRMの各機能について、具体的な活用法を紹介します。具体例を通して、自社でも役立ちそうな活用法を見つけてくださいね。
営業活動支援機能
営業活動支援機能の活用事例を、急成長するIT系の企業を例によってご紹介します。元々少人数だったこの企業では、エクセルで顧客情報の管理をしていましたが、営業が5人以上になると管理しにくくなったため、クラウドCRMを導入しました。
顧客データ管理
顧客データをクラウドCRMで一元管理することで、モバイルでいつでもどこからでも顧客情報を取得できるようになりました。外出の多い営業も、内勤の社員と同レベルの情報を確認でき、効率の良い営業ができるようになっています。
案件管理
データの紐づけから現場の営業が出先からリアルタイムで案件の進捗や商談内容を入力。顧客情報に案件の進捗状況がリアルタイムで共有されるようになり、商談の見込み精度も上がりました。
受注プロセスの見える化もできるようになり、プロセスがスムーズに進むようにもなっています。
売上予測
エクセルで計算する手間がかかっていましたが、CRMのレポートを確認するだけですぐに売上予測の状況が確認できるようになりました。
顧客サポート機能
伝統工芸関係の老舗の事例です。長く使い続けられる商品を作っているため、顧客との付き合いも10年、20年と続きます。長い付き合いの顧客のことを従業員全員が知っていくためにCRMを導入しました。
10年単位でアフターケアや関連商品の案内などにCRMの顧客情報を役立てることで、ファンを増やしています。
顧客からの御礼状は画像で保存していることで、社員全体の励みにもなっています。
マーケティング機能
マーケティング機能における以下の機能について、具体的な活用事例をご紹介します。
プロモーション活動支援
デジタル広告業界の活用事例をご紹介します。
広告をCRMの顧客情報を連動させて、より訴求力の高いデジタル広告をターゲットのユーザーに表示させる「アドレサブル広告」は、プロモーション活動支援の具体的な事例です。
見込み客管理
展示会やセミナーなどで来場した顧客は、その後の継続的なアプローチで顧客となる見込みがあります。来場した顧客に自動でフォローメールを送信することで、見込み客を増やせるようになります。
顧客育成(ナーチャリング)
女性向けの小売業の事例です。メールマーケティングでメルマガを一斉配信していたのですが、だんだん開封率などが下がっていき関心が低下していました。
そこで、同じ内容の配信を取りやめ、購入製品ごとに違う内容のフォローをする個別形式のステップメールへとアプローチ方法を変更。
すると、メールの内容が有用と見なされ、開封率の改善、売上向上などの効果が出ました。
顧客ごとにきめ細やかな対応やフォローを順序良く続けていくことで、顧客の育成を促した例です。
まとめ
クラウドCRM(顧客管理システム)では何ができるのか、導入メリットと使い方について解説するとともに、有名なクラウドCRMをピックアップして価格やキャンペーンの有無などをご紹介しました。
クラウドCRMは、オンプレミス型のCRMよりも安価に、そして迅速に導入できる顧客管理システムです。主に既存顧客との関係を強め、優良顧客を育成するために使える機能を備えるとともに、営業活動やマーケティング活動をサポートする機能も豊富に用意されています。
現場の営業やオペレーターには入力の手間がかかるため、できる限り現場の負担を少なくするような入力で収まり、操作性の良いことと、自社の目的に合った機能が充実していることが、クラウドCRM選定のカギです。コスト面も無視できませんが、自社のやりたいことができるクラウドCRMを候補として選んだ後、コストで比較するようにすると良いでしょう。