更新日:2024/10/16
MAのシナリオ設計とは? ツールの主な機能や設定手順・成功させるポイントなど詳しく解説
【監修】株式会社ジオコード マーケティング責任者
渡辺 友馬
MA(マーケティングオートメーション)におけるシナリオ設計とは、顧客のアクションに応じて事前にアプローチを決めておき、自動で実行することです。シナリオ設計を活用すると、それぞれの顧客に合わせた方法・タイミングでの効率的なアプローチが可能となります。
本記事ではMAのシナリオ設計について、MAツールにはどのような機能があるのか、設計の手順や成功させるポイント、メリットなどを解説します。シナリオ設計の具体例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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MAにおけるシナリオ設計とは
MA(マーケティングオートメーション)とは企業のマーケティング施策を自動化し、効率性を高めるためのシステムを指します。企業の営業活動では、獲得したリードのうちの一部しか最終的な購買に至りません。MAの大きな役割は、リードに対して適切なタイミングでニーズに合った情報を提供し、見込み顧客の購買意欲を高めて成約数を増やすことです。
MAにおけるシナリオ設計とは顧客が購入に至るまでの行動を予想し、実現する計画のことです。顧客の属性や行動などに応じて効果が高いと考えられるシナリオを設定しておけば、効率的かつ効果的なアプローチができます。シナリオの精度によって営業活動の成果が左右されるため、シナリオ設計には力を入れることが大切です。
MAツールの主なシナリオ機能
MAツールの主なシナリオ機能には、大きく以下の2つが挙げられます。
- 設定したシナリオに沿ったメール配信
- 顧客行動に合わせたシナリオ分岐
それぞれの具体的な特徴について次項で解説します。
おすすめのMAツールについて詳しくは以下の記事も参考にしてください。
設定したシナリオに沿ったメール配信
MAツールの中には、設定したシナリオに沿ってメールを配信できるものがあります。具体的には顧客に対してメールを送信した場合、メールが開封されたか、メールに記載されたURLがクリックされたかなど、顧客のアクションに応じて次のメールが自動で配信される仕組みです。例えば顧客がメールを開封していなければ数日後にメールを再送し、開封した顧客に対してはキャンペーン案内のメールを送信するといったものです。顧客のアクションは、MAツールが自動で判別します。
シナリオに沿ったメール配信によって、顧客の自社に対する興味や関心を確認し、購入の検討段階に合わせた情報提供が可能です。同じメールを一括送信する場合と比べて、顧客に寄り添った営業活動ができます。
顧客行動に合わせたシナリオ分岐
MAツールを利用すれば、顧客の行動に合わせてシナリオを分岐させていくことが可能です。例えばメール上のURLから自社サイトにアクセスした顧客は自社製品・サービスへの興味が高い状態だと予想できるため、営業担当が直接アプローチするように設定します。閲覧した自社ページの内容に合わせて、関連するホワイトペーパーの案内をメールで送信してもよいでしょう。
一方、自社のメールを開封していても自社サイトにアクセスしていない顧客なら、自社への関心がまだそれほど高いとはいえないため、新しく別のメールを送信します。MAツールを活用すれば顧客のアクションから現在の状態を予想し、適切な営業活動を効率的に選択可能です。
MAにおけるシナリオ設計5つの手順
MAにおけるシナリオ設計は、以下の5つの手順に分けられます。
- 1.シナリオの目的を設定する
- 2.ターゲットを明確にする
- 3.アプローチするタイミングを決める
- 4.配信コンテンツの内容を決定する
- 5.アプローチする方法を選ぶ
それぞれのポイントについて解説します。
1.シナリオの目的を設定する
まずはシナリオの目的を設定します。目的が明確になっていなければシナリオの軸が定まらず一貫性がなくなってしまいます。目的がしっかりと設定されれば手法を決めやすく、予算や必要な人員なども逆算して決定できるでしょう。例えばシナリオの目的として、自社サイトの訪問者に製品・サービスの無料トライアルを申し込んでもらうことが挙げられます。無料トライアルを申し込んでもらうことを目標にしたら、申し込みを増やすためにどのような施策を取ればよいのかを検討していく必要があります。シナリオを設計していく中で妥当性に疑問が生じたら、最初に定めた目的を振り返り、シナリオの軸にズレが生じていないかを確認してください。
2.ターゲットを明確にする
シナリオ設計の目的を設定したらターゲットを明確にします。マーケティング施策の効果を高めるため、ターゲットの属性やニーズなどを具体化していきましょう。ターゲットへのアプローチに力を入れても、そもそも狙う属性やニーズとマッチしていなければ、労力に対する十分な効果が得られません。ターゲットの属性は年齢や性別、地域などの属人的な情報や、現在の状況やニーズ、行動といったステータスから判断します。ターゲットを属性分けすれば、属性ごとのアプローチ効果の測定ができるようになるため、各ターゲットへの理解が深まるでしょう。
例えば自社サイトの訪問者に無料トライアルを申し込んでもらいたいケースなら、すでに自社を認識し、ある程度の関心があると予想できます。そのような顧客に対しては製品やサービスに関する詳細な情報を提供したり、営業担当からの働きかけで信頼関係を築いたりする営業活動が効果的でしょう。
3.アプローチするタイミングを決める
ターゲットが絞り込めたら、次はアプローチするタイミングを決めます。顧客に対する情報提供のタイミングや頻度は印象を決定づける要素となるため、慎重に検討しましょう。アプローチが多いほど効果的とは限りません。一方で、アプローチを控えていると、競合他社に先を越されてしまうリスクがあるでしょう。
アプローチを決める際のポイントはターゲットの属性を見極め、必要とされるタイミングを計ることです。顧客が現在何を必要としていて、自社製品・サービスに対してどれくらい関心があるのか、行動から読み解いていきましょう。
4.配信コンテンツの内容を決定する
ターゲットが明確になりアプローチするタイミングが決まれば、次は具体的な配信コンテンツの内容を検討します。配信コンテンツの例は自社の製品・サービス資料や、実際の導入事例、自社セミナーへの招待などです。アプローチするタイミングで、顧客が何を求めているか考えてみましょう。
配信コンテンツを検討する際は、自社が伝えたい内容よりも顧客のニーズを優先する必要があります。例えばいくら製品・サービスの強みを伝えたくても、顧客の関心を十分に引き出せていなければコンテンツを見てもらうのは難しいでしょう。自社製品・サービスではなく顧客に発生し得る課題をコンテンツのメインに据えた上で、その解決策として自社製品・サービスを紹介すれば、より興味を引きやすくなります。
5.アプローチする方法を選ぶ
顧客へのアプローチにはさまざまな方法があります。オンライン上のアプローチとしてはメール送信や自社サイト・SNSの運用などが一般的です。オフラインでのアプローチには電話やDM送付、セミナー実施などがあります。
オンライン上のアプローチ方法ならMAツールによって効果測定が可能です。メールの開封状況やクリック率、自社サイト上で閲覧されるWebページなどを分析し、営業活動のブラッシュアップに活用しましょう。オフラインでのアプローチ方法では、すでに意欲が高い顧客の購買を後押しするには効果的ではあるものの、多くの時間や労力といったコストがかかります。顧客の属性や状況などから効果的なアプローチ方法を選択しましょう。
MAのシナリオ設計を成功させるポイント
MAのシナリオ設計を成功させるためには、以下がポイントとなります。
- さまざまな顧客データを収集する
- 効果的なコンテンツ内容を把握しておく
- データの裏づけを取る
- シナリオの効果は定期的に確認・改善する
- シンプルなシナリオを設定する
それぞれ詳しく解説します。
さまざまな顧客データを収集する
シナリオ設計においてはさまざまな顧客データの収集が重要です。収集したデータはペルソナ設計や、カスタマージャーニーの作成に活用できます。ペルソナ設計とは架空のターゲットを詳細まで設定するマーケティング手法です。まるで実在する人物のように、勤務先の業種や部署、年収、価値観、ニーズなどを決めていきます。実情に即したペルソナを作るためには、実在のデータに基づいて設計する必要があります。
カスタマージャーニーとは自社製品・サービスを購入する顧客について、自社の存在を認知してから成約に至るまでの一連のプロセスをパターン化したものです。カスタマージャーニーによって顧客の各段階におけるニーズが可視化され、シナリオ設計を適用しやすくなります。顧客データが多く蓄積されているほど詳細なカスタマージャーニーが作成でき、より顧客に寄り添ったシナリオ設計が可能です。
効果的なコンテンツ内容を把握しておく
シナリオ設計を成功させるには、自社の製品・サービスを売り込むための効果的なコンテンツ内容を把握しておかなければなりません。シナリオ設計の最終的な目的はCV(コンバージョン)につなげることです。CVとはマーケティングにおける成果を指します。
シナリオ設計に力を入れていても、効果的なコンテンツが作成されなければ最終的な目標を達成できません。例えば自社サービスの無料トライアルを申し込んでもらうことをシナリオ設計のCVとして設定した場合、顧客の要望や悩みに答えるにはどのようなコンテンツを提供すればよいのかを検討し、顧客が試してみたいと思うようなコンテンツを作成する必要があります。
データの裏づけを取る
顧客に合わせたコンテンツを作成するためには、そのコンテンツがなぜ求められるのか、具体的な原因を理解しておく必要があります。顧客が特定の情報を求める理由を把握していなければ、適切なコンテンツを提供したり、状況の変化に合わせてコンテンツを適切にアレンジしたりといったアクションが難しくなるでしょう。
コンテンツが求められる原因を正確に知るためには、データの裏づけを取ることが大切です。想像や感覚に基づいて営業活動を展開していると、顧客が求めるアプローチからズレてしまうリスクがあります。物事のイメージと実態が離れているケースは少なくありません。思い込みを捨て、具体的なデータを用いる習慣を付けましょう。
シナリオの効果は定期的に確認・改善する
設計したシナリオは、その効果を定期的に確認し、必要に応じて改善していくことが大切です。一度設計したシナリオをそのまま使い続けていると、それが最適なものなのか検証できず、状況の変化にも対応できません。シナリオ設計ではPDCAを回し、継続してブラッシュアップを図りましょう。
シナリオ設定の効果確認に使える指標は複数ありますが、全ての指標を対象にすると、分析に多くの労力を要します。効果を確認する指標は重要なものに絞って定点観測し、さらに詳細に分析する必要がある部分は、他の指標も組み合わせるとよいでしょう。例えば顧客に送信するメールの題名や内容が適切か確認する際は、開封率やURLのクリック率を参照にします。さらに外的要因も加味したいなら、メール全体の開封数も合わせて分析してください。
シンプルなシナリオを設定する
シナリオは複雑に設計せずシンプルにしましょう。複雑なシナリオを用いていると、該当する顧客の数が絞られてしまうからです。特に顧客の数が少ないBtoBでは、見込み顧客が見つからず、シナリオ作成の意味がなくなってしまうかもしれません。
複雑なシナリオ設定を行うには多くの時間を必要とし、効果測定もしにくくなります。一方でシンプルなシナリオにすれば短時間で設定でき、労力や人材コストを削減可能です。修正や最適化を行う際にも手間がかかりません。シナリオ設計の成功率を高めるためにもシンプルなシナリオを意識しましょう。
MAのシナリオ設計で得られるメリット
MAのシナリオ設定で得られるメリットは以下のとおりです。
- 効率的に業務を進められる
- 顧客へのアプローチのタイミングを図れる
- CV(コンバーション)につながる
それぞれのメリットについて解説します。
効率的に業務を進められる
顧客ごとにユニークな戦略を練るには、膨大な労力と時間が必要です。シナリオ設計によって顧客が購入に至るまでの行動をパターン化し、マーケティングの効率化を図れます。さらには、顧客のアクションに対して自動でシナリオを進められるため、手動で行う業務の削減も可能です。手動で行っていた施策を自動化できれば、時間や人的リソースに余裕が生じ、業務効率化につなげられるでしょう。
顧客アプローチのタイミングを図れる
シナリオ設計をすることのメリットの一つは、顧客アプローチのタイミングを図れる点です。シナリオ設計では、特定の行動を起こした顧客に対して、次のアクションを設定できます。顧客の行動を起点に自社の行動が決まるため、顧客の関心度合いに応じた効果的なタイミングを見極められます。顧客の数が多いケースでは、全ての案件を手動で管理し、施策を考えていては、膨大な労力が必要となるでしょう。管理漏れによってアプローチが遅れてしまえば、競合他社と比べて競争力が落ちてしまう可能性があります。MAツールを導入することで、アプローチのタイミングを自動でマネジメントできるため、効率的で効果的な営業活動が可能です。
CV(コンバーション)につながる
CV(コンバージョン)につなげられる点も、シナリオ設計のメリットです。MAツールを活用すれば、顧客に対してニーズに沿った情報を適切なタイミングで適用できます。コンテンツ内容とタイミングを見極めることで、顧客の興味を惹きつけられ、CV率を上げられるでしょう。CVへの誘導や継続的な営業活動、顧客との良好な関係の維持などで顧客の意欲を高め、最終的な購買につげられれば、自社の収益を向上させられます。
MAにおけるシナリオ設計の例
MAにおけるシナリオ設計の参考として、状況別に具体例を紹介します。
- メルマガユーザーに配信するシナリオ設計
- 会員登録後の顧客に対するシナリオ設計
- かご落ち商品の訴求・購入のシナリオ設計
メルマガユーザーに配信するシナリオ設計
最初に紹介するシナリオ設計の例は、自社のメルマガユーザーに配信するシナリオ設計です。例えば自社で新製品を発売した場合、メルマガには新製品の情報や、購入ページにつながるURLなどを記載したメールを送信します。メルマガの送信から48時間後のタイミングで、すでに新製品の購入にまで至ったユーザーに対しては、購入のお礼や製品の活用方法などを記載したサンクスメールを送信します。顧客との関係強化につながるでしょう。
一方メルマガを開封したり、URLをクリックして購入ページにアクセスしたりしたものの、購買に至らない顧客もいます。このような顧客に対しては、追加メールで新製品のアピールをしたり、肯定的な口コミをお知らせしたりしましょう。自社製品に関心がある顧客に対してポジティブな情報を提供することで、購入を促す効果があります。
メールを開封していない顧客に対しては、新たな情報を追加で送信するのではなく、新製品の詳細を記載したメールを再度送信して購入を促します。メールではなくLINEなど、別のチャネルでのアプローチを検討するのもよいでしょう。
メルマガにおけるシナリオ設計では上記のように、顧客の購入・クリック・開封といったアクションをポイントに、次に送信するメールの内容を事前に決めておきます。
会員登録後の顧客に対するシナリオ設計
2つ目に紹介するシナリオ設計の例は、会員登録後の顧客に対するシナリオ設計です。シナリオ設計は自社サービスの会員登録を促す際にも効果的です。Web上の会員登録では多くの場合、フォームに必要項目を入力・送信し仮登録した後、送信されるメールのURLをクリックして、本登録を完了するシステムが採用されています。しかし顧客が仮登録をした後に、本登録の操作を忘れてしまったり、操作を途中で放置してしまったりするケースは珍しくありません。
本登録まで進んでもらうためには、仮登録の段階でサンクスメールを自動送信するシナリオ設計を組み込んでおくのがおすすめです。仮登録の段階でも、顧客の氏名やメールアドレスといった連絡先が獲得できているので、リーチしやすい状況となっています。サンクスメールによって仮登録の感謝を伝えるとともに、本登録へと誘導し、新規会員の獲得につなげましょう。
かご落ち商品の訴求・購入のシナリオ設計
3つ目に紹介するシナリオ設計の例は、かご落ち商品の訴求・購入のシナリオ設計です。かご落ち商品を顧客に対してアピールし、購入につなげるためにも、シナリオ設計は役立ちます。かご落ちとは商品がオンラインショップのカートに入れられたものの、購入に至らず顧客が離脱してしまう状態をいいます。
商品をカートに入れたままで別の商品を検討しているうちに、カートに入れた商品のことを忘れてしまい、オンラインショップを離脱してしまうケースは少なくありません。一度商品をカートに入れている顧客は購入意欲が高い可能性が大きいため、取りこぼさないようリマインドすることが大切です。
シナリオ設計によってカートに商品を入れたままの顧客には、一定時間後にリマインドするよう設定しておきましょう。カート内の商品だけでなく、一緒に購入される可能性のある商品や、人気が高いトレンド商品なども併せて紹介すれば、同時に購入してもらえる可能性が高まります。
休眠顧客に再購入を促すシナリオ設計
最後のシナリオ設計の例は、休眠顧客に再購入を促すシナリオ設計です。シナリオ設計によって休眠顧客に対して自社製品・サービスの再購入を促すことも可能です。休眠顧客とは、以前は製品・サービスを購入していたものの、現在では購入に至っていない顧客のことです。そういった顧客に対して適切にアプローチすれば、再購入につなげられる可能性が高まるでしょう。
休眠顧客に対しては一定期間の後に購入履歴に応じた商品をおすすめしたり、期間限定のクーポンを配布したりするという方法があります。一定期間後は会員ランクが下がってしまう旨を通知し、再購入への意欲を高めるのもおすすめです。休眠顧客となってしまった理由について仮説を立て、再度購入につなげられるようなコンテンツを配信するのもよいでしょう。
まとめ
シナリオ設計では顧客それぞれの属性や行動に応じて最適なアプローチ方法を効率的に見極め、実行までの計画を立てます。MAツールを導入すれば顧客のデータを蓄積でき、行動に基づいたパターン分けが容易となります。またシナリオ設計に基づいたアクションを自動で実行できるので、営業活動の業務負担も軽減できるでしょう。
MAツールを導入するなら「ネクストSFA」をおすすめします。ネクストSFAはリードの獲得・育成から商談管理まで一連の機能が搭載されたツールです。MAも充実しており、シナリオ設計に必要な以下の機能がそろっています。
- メール一括配信
- シナリオメール
- スコアリング/トラッキング
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